加納俊輔「ピンク・シャドウ」

2018年10月26日 - 11月25日

オープニング・レセプション:10月26日(金)18:00 - 20:00

Maki Fine Artsでは、10月26日(金)より、加納俊輔 個展「ピンク・シャドウ」を開催致します。
加納俊輔は1983年大阪生まれ。京都在住。2010年 京都嵯峨芸術大学大学院芸術研究科修了。写真を通して、複雑な階層を意識させる手法により、「見る」という行為を問い直す作品を発表しています。近年の主な展覧会として、個展「コンストラクション断面」Maki Fine Arts(2016、東京)、個展「第8回 shiseido art egg 『加納俊輔 | ジェンガと噴水』」資生堂ギャラリー(2014、東京)、グループ展「VOCA展2017 現代美術の展望─新しい平面の作家たち」上野の森美術館(2017、東京)、グループ展「これからの写真」愛知県美術館(2014、愛知)など。Maki Fine Artsでは5度目となる本展では、美術家、井田照一氏(京都出身、1941年-2006年)の作品からアイデアを得た新作を発表します。是非ご高覧ください。

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「layerあるいはlayers」

加納俊輔の近年のシリーズ名《layer of my labor》。英語は冷淡に単数、複数を問うため、事態の積層があるならlayerにsを付けるべきではないかと、筆者は老婆心ながら告げてみた。加納の応答の際のためらいは、sを付けた瞬間に、見る者がそこに何層あるのかを見極めようとする、そのイメージに対する加算的な態度を忌避したい思いから来ているように思えた。撮影 - 出力 - 撮影を繰り返したところで、積層された事態も最終的に獲得される写真の像、そしてその出力はペラペラで全き単数の層でしかないのだ。
加納は今回、「表面は間である」という基本概念を生涯のテーマとした作家井田照一の作品、殊に《Lotus Sutra》のシリーズに大きく触発されたという。紙という水平面に垂直に作動し生成する版によるイメージ。思えばlotus(蓮)の葉の水平面とSutra(経)というタテ=垂直の出会いは、井田の基本概念の一様態でもあるだろう。加納は着目したのはこのシリーズにおいて認められる、紙の裏からの刷りだという。紙の上に刷られたイメージは紙と版との「間」で生成する表面だとするのが井田の基本概念だが、そこに紙の裏側でも起きている表面の生成が加わることは、「間」の積層であり、「表面」の積層でもある。
加納の近作では、紙の裏から像を透過する撮影という手順を施し、裏側からの作業という層が加えられているという。井田の場合は、見る者が裏にも層があると認識できるか否かに拘わらず、見ている像が「間」の積層という事態に支えられていることが重要であったに違いない。だが加納は井田に敬意を払いつつも、「表面は表面である」と言わんばかりに最後のイメージにおいて易々とsを取り去るのである。

中谷至宏(京都市美術館学芸員)

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